2月の映画 『インヴィクタス』
『インヴィクタス』 : クリント・イーストウッド監督、モーガン・フリーマン、マット・デイモン
子供たちのあこがれの職業に政治家は入らない。
あこがれどころか、政治家など利己主義のかたまりだという報道も多い。アル・ゴア氏の温暖化防止への情熱的な活動を描
いた「不都合な真実」という作品の冒頭で、ゴア氏は、「私は政治家であることに誇りを持っている」と述べる。当たり前の言葉
のようであるが、自らの信念と行動への揺るぎない自信からくる言葉である。自分もそうありたいと思う。
「インヴィクタス」は、クリント・イーストウッドには珍しく、英雄賛歌・政治家賛歌の映画である。
ネルソン・マンデラ氏は、27年にも及ぶ獄中生活を経て大統領に就任した人物である。作品の中で、27年のうち18年を過ごした監獄島ロベン島を、マット・デイモン扮するラグビーチーム主将ら訪ねるシーンがある。一室が幅2メートル、奥行き2.5メートルの独房だ。しかも、終身刑の身の上である。こういう絶体絶命の状況下において、自分を失わず、希望を失わず、笑顔を失わない人物、それがネルソン・マンデラという人物であるなら、マンデラ賛歌の映画でもいい。
「私がわが運命の支配者、わが魂の指揮官」。独房生活の彼を支えた詩(ウィリアム・アーネスト・ヘンリー)の一節だ。尋常ならざる強靭な意志である。加えて、この映画のテーマは、「赦し」にある。1994年、マンデラ大統領就任に伴い、官邸の白人職員は荷物をまとめていた。彼は、白人職員たちに言う。「過去は過去だ。皆さんの力が必要だ」。SPにまで白人を加えた。1960年代から始まったアフリカ諸国独立の過程で、ほとんどの国が黒人単独の支配体制を取り、白人が持っていた国家運営のノウハウは継承されず、腐敗をしていった。白人の協力を得られなければ国家経営はできないという政治家としての冷徹な合理的思考も背景にあるだろう。
知らなかったが、弱小チームであった南アチームの1995年のラグビー・ワールドカップ優勝は実話である。やはり、スポーツを通しての感動は人間の魂を揺さぶる。
ご多聞に漏れず、「ショーシャンクの空に」以来、モーガン・フリーマンは好きな俳優だ。マンデラ氏が自伝を出版した時、「映画化されるなら、誰に演じてほしいか」と訊かれ、彼の名前を挙げたという。
クリント・イーストウッドはいい映画を残してくれた。
(右写真は映画パンフレットより)


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